エアーコンプレッサーとスプレーガンを使った塗装は、缶スプレーでは得られない均一な仕上がりと塗膜の厚みが得られます。ただし、美しい仕上がりには「下地処理8割・塗り2割」と言われるほど準備が重要です。この記事では、下地処理から塗料の希釈、スプレーガンの調整、塗り方テクニック、乾燥、クリア塗装まで、全工程を順を追って解説します。
塗装に必要な道具一覧
エアーコンプレッサー以外に、以下の道具を揃えてから作業を始めてください。
| 道具 | 用途 | 目安価格 |
|---|---|---|
| スプレーガン(重力式推奨) | 塗料の噴霧 | 3,000~15,000円 |
| レギュレーター付きエアフィルター | 水分・油分の除去と圧力調整 | 2,000~5,000円 |
| サンドペーパー(#320~#1000) | 下地処理・足付け | 500~1,000円 |
| マスキングテープ・養生シート | 塗装範囲外の保護 | 500~1,500円 |
| 防毒マスク・保護メガネ | 塗料ミストからの身体保護 | 2,000~5,000円 |
| シンナー(薄め液) | 塗料の希釈・洗浄 | 500~1,500円 |
| プライマー(下塗り塗料) | 密着性の向上 | 1,000~3,000円 |
| クリア塗料 | 仕上げの保護層 | 1,500~4,000円 |
工程(1):下地処理が仕上がりの8割を決める
塗装の失敗原因の大半は下地処理の不備です。塗料がしっかり密着し、ムラなく均一に仕上がるためには、以下の手順を省かないでください。
- 洗浄:塗装面の油分・ホコリ・汚れを中性洗剤で洗い流し、完全に乾燥させる
- 脱脂:シリコンオフ(脱脂剤)を塗装面全体に吹き付け、ウエスで拭き取る。指で触れた跡も油分になるため、脱脂後は素手で触らない
- 足付け(サンディング):#320~#400のサンドペーパーで塗装面に細かい傷をつける。この傷が塗料の密着面になる
- 再脱脂:足付けで出た粉塵をエアブローで飛ばし、再度シリコンオフで脱脂する
- マスキング:塗装しない部分をマスキングテープと養生シートで覆う。テープの境目に隙間がないことを確認する
工程(2):塗料の希釈とスプレーガンの調整
塗料はそのままでは粘度が高すぎてスプレーガンで噴霧できません。メーカー指定の希釈率でシンナーを混ぜて粘度を下げます。
塗料の希釈率の目安
- ウレタン塗料:塗料10に対しシンナー3~5(主剤:硬化剤:シンナー=10:1:3~5)
- ラッカー塗料:塗料1に対しシンナー1~1.5
- 水性塗料:塗料10に対し水1~2(製品ごとに異なる)
希釈した塗料を撹拌棒でよく混ぜた後、ストレーナー(フィルター)を通してガンカップに注ぎます。ゴミや塗料の塊がガンに入るとノズル詰まりの原因になります。
スプレーガンの3つの調整ポイント
- エア圧:0.2~0.3MPa(レギュレーターで設定)。高すぎるとミストが飛散しやすく、低すぎると塗料が粒状になる
- 塗料吐出量:ガン後部のニードル調整ネジで設定。最初は少なめに設定し、テスト吹きで調整する
- パターン幅:ガン横のエアキャップ調整ネジで設定。広い面は幅広パターン、狭い面は幅狭パターンにする
必ずダンボールなどでテスト吹きを行い、均一な霧状になることを確認してから本番に入ってください。
工程(3):塗り方テクニック – ムラなく仕上げるコツ
塗装は「薄く何回も重ねる」が鉄則です。一度に厚塗りすると垂れ・ムラ・ゆず肌(表面がデコボコになる現象)の原因になります。
- プライマー(下塗り):塗装面から15~20cmの距離で、左右に均一なスピードで移動させながら1~2回塗る。10~15分乾燥
- ベースカラー(本塗り)1回目:薄く全体にかけるイメージで吹く。完全にカバーしなくてOK。10~15分乾燥
- ベースカラー2回目:1回目で透けている部分を重点的にカバー。10~15分乾燥
- ベースカラー3回目:最終的な色味を均一に整える。必要に応じて4回目を追加
スプレーガンの動かし方の基本
- 距離:塗装面から15~20cmを一定に保つ。近すぎると垂れ、遠すぎるとザラつく
- 速度:一定のスピードで移動する。止まると塗膜が厚くなり垂れる
- 重ね幅:前のパスと1/3~1/2重ねて塗る。重なりが少ないとスジが出る
- 角度:塗装面に対して常に垂直にガンを向ける。斜めに吹くとムラになる
工程(4):クリア塗装で仕上げる
ベースカラーが乾燥したら、クリア塗料で仕上げの保護層を作ります。クリア塗装は光沢と耐久性を与える重要な工程です。
- ベースカラーの最終塗りから20~30分乾燥させる(完全硬化前の状態がクリアの密着に最適)
- クリア塗料をメーカー指定比率で希釈する
- 1回目は薄くミストコート(軽く吹く)。5~10分乾燥
- 2回目はやや多めにウェットコート(しっかり吹く)。光沢が出始める
- 3回目で最終仕上げ。均一な光沢を目指す
クリア塗装後は24時間以上乾燥させてください。急ぐと塗膜が柔らかいまま硬化不良を起こします。
塗装に必要なコンプレッサーのスペック
塗装はエアーコンプレッサーの用途の中でも比較的多くのエアを消費します。スペック不足のコンプレッサーを使うと、圧力が安定せず仕上がりに直結します。
| 塗装の規模 | タンク容量 | 推奨圧力 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 小物(プラモデル・パーツ) | 10~30L | 0.2~0.3MPa | エアブラシ使用時は水分除去フィルター必須 |
| 中規模(バンパー・フェンダー) | 30~50L | 0.2~0.4MPa | 圧力回復の待ち時間に注意 |
| 大規模(車全体・家具) | 50L以上 | 0.3~0.5MPa | 連続使用には大容量タンクが必要 |
塗装用コンプレッサーの選び方について詳しくは塗装用エアーコンプレッサーの選び方をご覧ください。また、DIY塗装の具体的な作品例はDIY塗装マニュアルでも紹介しています。
よくある質問
Q. 塗装中にコンプレッサーの圧力が下がってしまいます。どうすればよいですか?
タンク容量に対してエア消費量が多い場合に起こります。対策は3つあります。(1)塗りの合間にコンプレッサーの圧力が回復するまで待つ、(2)スプレーガンのエア消費量が少ないHVLP(高容量低圧)タイプに変更する、(3)タンク容量の大きいコンプレッサーに買い替える。連続塗装が多い方は50L以上のモデルがおすすめです。
Q. 塗装したら表面がザラザラ(ゆず肌)になりました。原因は何ですか?
ゆず肌の主な原因は、(1)スプレーガンの距離が遠すぎた、(2)エア圧が低すぎた、(3)塗料の希釈が足りなかった、のいずれかです。対処法は、完全に乾燥した後に#1500~#2000のサンドペーパーで表面を研磨し、コンパウンドで磨き上げることで改善できます。
Q. 屋外で塗装しても大丈夫ですか?
可能ですが条件があります。風が弱い日(風速2m/s以下)を選び、気温15~25度、湿度70%以下の環境が理想です。風が強いと塗料ミストが飛散して周囲に付着するだけでなく、ホコリが塗装面に付いてブツ(異物の突起)の原因になります。養生を広めに行い、風上に向かって塗装しないよう注意してください。
まとめ
エアーコンプレッサーでの塗装は、下地処理・塗料の希釈・ガン調整・薄く重ね塗り・クリア仕上げの5工程を丁寧に行うことで、プロに近い仕上がりが得られます。特に下地処理と脱脂を手抜きしないことが最大のポイントです。塗装に必要なタンク容量は小物で30L、中規模以上で50L以上が目安です。
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執筆:エアセルフ(air-compressor.jp)|静音オイルレスエアーコンプレッサー専門店|販売実績3,000台以上
